はじめに
今から2年前の2023年2月23日午前11時、『銀河鉄道999』・『宇宙戦艦ヤマト』などで知られる原作者の松本零士さんが急性心不全で死去しました。享年85歳。その松本零士さんの代表作である『銀河鉄道999』があります。テレビアニメ化・映画化にもなっている作品で、主人公星野哲郎と旅する謎の美女メーテルが登場します。皆様、そのメーテルにモデルがいることは知っていますか？その人物は明治時代の活動した楠本高子で、江戸時代に来日したオランダ医師シーボルトの孫娘でもあります。楠本高子はどのような人物なのか？詳しく見てみましょう？
楠本高子の生涯
オランダ人（ドイツ人）医師のシーボルトと長崎商家俵屋の瀧の間に生まれた娘楠本イネが、1852年（嘉永5年）2月26日に父シーボルトの弟子の石井宗謙と関係を結び生まれたのが、高子であった。私生児であったため、天がただで授けた者との事から「タダ子」と母親イネから命名された。高子はシーボルトの孫であった。
楠本高子の手記によれば、母イネが高子を身ごもったのは石井宗謙に強姦されたからであると口述してるが、高子が酒に酔った状態で書いたため、強姦の事実が史実ではないとされ、例え、どっちにしろ、師匠の娘に手を出したため、父宗謙は二宮敬作を始めとした同門から怒りをかい、宗謙は、シーボルト時代の同窓から破門同然の制裁を受けている。
高子が13歳の時まで長崎にいる祖母お滝の元で育ち、幼少時は琴や三味線・舞など芸事に熱心であり、医者を嗣ぐことを期待していたイネを嘆かせていたという。（1864年)
1865年に高子は母の師二宮啓作の縁により宇和島藩の奥女中として奉公を始める。翌1866年（慶応2年）高子は二宮啓作の甥の三瀬諸淵(三瀬周作）と結婚した。
1877年（明治10年）胃腸カタルにより夫の三瀬諸淵が亡くし高子は、異母兄石井信義のもとで産婦人科医を学んだ。高子は石井信義のところに出入りしていた医師の片桐重明に船中で強姦され、周三（亡き夫三瀬周三にちなんで命名）を妊娠した。
妊娠した高子は1879年（明治12年）長崎に戻り、周三を出産した。周三は生まれると間もなく池原家に養子に出され、高子は山脇泰助（佐賀柄崎病院長）と再婚した。翌1880年（明治13年）に高子の母である楠本イネは池原家から周三を自分の養子として引き取り、養育を始めた。また高子は山脇との間に三人の女児（初、たき、種子）を授かっていたが、1886年（明治19年）9月夫の山脇泰助がコレラで急逝したため、高子も再び長崎のイネのもとに戻り、同居を始めた。
楠本イネ・高子親子の上京と楠本周作の事
1889年（明治22年）秋、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが日本を離れる時に英国公使館通訳官として日本に残った異母弟のアレクサンダー・フォン・シーボルトの招聘でイネは周三を伴って再び東京に上京した。麻布区仲ノ町11番地アレクサンダーの弟ハインリッヒ・フォン・シーボルトの持ち家の空き洋館に住居を定めた。 麻布狸穴町に産科医院を開業した（イネは医師免許を取得しなかったため、産婆として）。1891年（明治24年）にイネは高子親子をそこに呼び同居している。
1897年（明治30年）楠本周三は獨逸学協会学校（現獨協医科大学）に入学した。1902年（明治35年）獨逸学協会学校に卒業した。そして東京慈恵会医院医学専門学校（現在東京慈恵会医科大学）に1904年（明治37年）に入学し、1908年（明治41年）に卒業した。卒業後東京病院で研修し、その後、舞鶴海軍病院（現国立病院機構舞鶴医療センター）に勤務した。周作は1920年（大正9年）2月29日に41歳の若さで亡くなった。
『銀河鉄道999』のメーテルと楠本高子
楠本高子は1938年（昭和13年）7月18日。享年86歳。高子死去の年に生まれた漫画家の）松本零士さんは、1977年（昭和52年）から連載した『銀河鉄道999』（『少年キング』1977年1月24・31日合併号 – 1981年11月6日号）に登場人物のメーテルのモデルに、この楠本高子を選んだ。「松本零士さんはインタビュー（メーテルそっくりの親類（松本とは血縁関係はない）の写真が菩提寺より最近発見されたという。フランス人のクォーターで松本が生まれた1938年に亡くなっていることについて因縁めいた話をしており、それによるとメーテルのモデルは、松本零士さんの6代前の先祖が持っていた「楠本高子（シーボルトの孫娘）」の写真だ）という。松本さん（楠本高子の肖像写真を見て「この女性こそ、自分がずっと思い描いていた女性だ！」）と衝撃を受けた。
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